すでに、11代将軍、徳川家斉の義父で、現藩主島津斉興の祖父重豪は89歳の大往生をとげていたが、ここはかなり藩財政が逼迫しているし、南の琉球はもちろん、清国や南の呂栄(ルソン)から南洋の珍品をとりよせているようである。
一度、疑い出したらどうにもとまらない!林蔵は、城下町の浜田に入り、ひっそりと調査を始めた。とは言っても、なかなかわからなかったが、椰子の実を災難除けに飾っている家がかなりあるということ、それらは松原浦の舟乗りから買い求めているという噂を耳にした。
また、舟乗りの一部の肌が真っ黒というのも耳にした。山陰地方の領地で、周りの人が白いから、特に目立つようであった。ということは、浜田藩の商人の舟乗りが、直接、南まで行っているのかもしれない。そして、松原浦にはかなり大きな船が出入りしているという話も粘っていくうちにつきとめた。ここの回船問屋の持船であるという。