あー、俺はいつまでこうしていられるであろうか。いづれ、幕閣から正式に江戸へ出るように命じられるであろう、そしたら、今度や江戸勤めであろうか。それとも、また、今度はその健脚や、また測量も生かして、もしかしたら西国へ調査ということで上方にいくやもしれない。
また、今回で調査を終わった。俺は、光太夫殿のように漂流してロシアにいたわけでないから、軟禁はないだろうけど、もう必要はないとばかりに、いくばくかのお金(報酬)をもらってヒマをだされるかもしれなかった。
そうなると、役目もないし、故郷で農民でもやるか、ということになる。もともと農民だったわけであるから、ならば蝦夷地でノンノと一緒にずーっと耕作をしていたいという思いはあるが、もともと無理な話であった。ここにはあくまでも、お役目でいるわけだし、やはり農民なら故郷の畑に跡継ぎとしてもどりたい、アイヌ人として生きる気にはなれなかった。ただ、未練とでも言うのだろうか、重賢からも、ずっと江戸幕府からの命令があるとかいった知らせもなかったし、夏は、アイヌの村に行き、畑で、くわをもって野菜をうえ、雨の日には、三国志等、読んで、酒を飲んだ。そして、西日がかたむいてくると、ノンノを呼んでたわむれていた。