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 林蔵、奥の道未知!をいく

 江戸時代の探検家、間宮林蔵を題材とした小説です。

その二

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その二

翌日、今度は、絵でも描こうか、と道具を買いに行き、家に戻ると、先ほどの商家の使いの者が、ちょうど、小林一茶からの書状を持って林蔵を訪ねてきたところであった。

 一茶は、つい最近、故郷の村から江戸に戻り、借家生活をしているとのことだが、自分の部屋では、狭い長屋で残念ながらおもてなしもできないので、先の商家の二階の一室、句会を催す場所でもあるし、ここで、会いませんか、と記されていた。

 林蔵は、早速、使いの者に承知した、といった旨を伝え、自分が奉行所や江戸の城に行く用事のない時間帯をさっと手紙に記すと、使いの者に渡した。
 それで、ある夕刻、ついに、俳諧師の小林一茶と会うことになった。

 商家を訪ねると、すぐに二階の一室へ通された。林蔵がふすまを開けると、すでに一人の男性が、座って煙草をすっていた。

「間宮林蔵です」と軽く礼をすると、相手の男も立ち上がった。

 自分と同じくらい背丈(5尺2寸、約157cm)の男性で、自分と同じように小柄ながら、なんとなく貫禄があるように感じられた。

 「俳諧師の小林一茶です。本日は、わざわざご足労いただき、ありがとうございます」と一茶も軽く礼をして、二人、座った。

 すぐに、お茶と桜餅がでた。なかなか、うまいな!と思っていたら、一茶も微笑んで、煙管を置いて、話始めた。

 「蝦夷地や北の樺太まで、松田伝十郎様と調査に行かれたことは、すでに松田様から伺っております。本日は、私も楽しみにしていました。
 やはり、見たところ、お身体、ご壮健そうでございますな。桜餅、お口に合われますか」とたずねてきた。

 「はい、もともと、江戸の桜餅、羊羹、饅頭も好きです。酒も飲みますけど。
 ただ、樺太では全く、松前にも江戸ほど和菓子はなかったですから、忘れていましたね」と林蔵は答えると、すぐに一茶にむかって尋ねた。
「一茶先生は、松田様の俳諧の師匠でもあるとのことと伺いました。やはり、句会もよく開かれたりするのでしょうか」

 「いいえ、最近は全然開けていません。どうも、若いころは、九州や四国の方まで行っておりましたが、それでも、江戸にもどれば必ず句会を催していました。ですが、10年前ですが、松田伝十郎様の故郷のある越後の少し手前、北信濃ですが、父親がなくなりまして。それで、父の墓参りと、実家に母親が違う弟がいまして、ちょっと話もございまして、江戸と北信濃を往復することも増え、句会をゆっくり開けていないので、また、開きたいと思っております。伝十郎様が蝦夷地からお戻りになった時も、ちょうど、私も信濃から江戸に向かう途中で、江戸のすぐ手前、板橋の宿場町(今の板橋区)の茶店で伝十郎様を見かけたら、相手もすぐに気付いてくれまして、江戸までの道中、一緒でございました。」と一茶は言うと、お茶を一口すすって、またつづけた。

「その道中、蝦夷地だけでなく、さらに奥の樺太までいかれたと伺ったら、さすがにびっくり!しましたね。蝦夷地の北に樺太、そして、東には、島々がいくつかあるようですね。以前も、択捉島まで行かれたとか。あと、間宮様も、伝十郎様から伺いましたけど、やはり、択捉島におられたそうですね。ずっと、北辺の場所、冬なんか、大変だったんではないでしょうか?」

 林蔵は、この人にどこまで答えていいのか、相手は松田伝十郎から聞いた話を伝えているが、彼自身、相手をきちんと知らないし、それで言葉をえらびながら、ゆっくりと答えた。
「一茶先生は、松田様とかなりお話されたのでしょうか」

 一茶は答える、「いいえ、伝十郎さんが詳しく言われても、残念ながら私の方がわかりません。私は、北信濃の雪国の出身ですが、小さい頃、江戸に奉公にだされてから西国の方にずっといまして、実は、奥州もそんなによく知らないのです。蝦夷地でさえ、だいぶ奥で、日本人でなく、アイヌという原住民がいるとか。ただ、寒さが半端でないすごさ!と伺いました。あと、蝦夷地は実は、かなり広大なところで大きく耕せば、かなり作物が取れるかもしれないとか、でも、残念ながら米がとれない寒さで、一番南の端の松前と函館の港には日本人がたくさんいるが、少し奥に行くと、アイヌの村がぽつんとあるだけだそうですね。あと、そうそう、思い出しました。
 蝦夷地の一番北の宗谷というところに、ロシアの来襲にそなえて夏を中心に、奥州の藩兵が警備をされていたようですね。冬は、さすがにひどく、伝十郎さんはともかく、ほとんどの武士は、みな南に帰りたがっていた、とか、伺いました」
 
 林蔵は、自分が思っていた以上に一茶が蝦夷のことを知っているのに少し驚いたが、それだけ松田伝十郎と懇意なんだなと思うと逆に親近感を覚えた。
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プロフィール

作者:福田純也
福田純也
性別:男性
男性

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