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 林蔵、奥の道未知!をいく

 江戸時代の探検家、間宮林蔵を題材とした小説です。

その四

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その四

江戸でまた住居をかえて、近所の人には名前を偽って、一人静かにくらしながら幕府からの指令を待った。
 一茶殿は50で隠居したが、俺は60まで無理かもしれんな、うわさのほとぼりがさめるまでは、無理だとあきらめつつ思う。
 でもせっかくの業務、地方へも行けるし、それを楽しもうと考えをきりかえた。江戸と近所から狗の林蔵と言われるより、姿をかえて、どこかへ潜入するのも、それなりに楽しい。そしていつか、南の奥である薩摩へも行きたいと思った。それこそ、重豪はもう80をだいぶ過ぎていて、いつ亡くなってもおかしくない。この時代、日本中大半の藩が財政難だったが、大名行列やら蘭癖の重豪の影響で薩摩もひどい財政難のようだから密貿易をしているやらしれない。そうなれば、隠密の調査は必要であろう。
一茶は、西国に行って俳句を詠みまくったが、奥を極められず、その奥に足りないのは、自分が一人者であるからで妻を求めて子をつくることが奥だと、林蔵に言った。そして、その後の手紙にも相変わらず同じことが書かれていた。
 だから妻とは、まさに奥の細道、奥様ですよ、といった言葉、林蔵は、また思い出した。

 だがせっかく若い奥様をもらったが、生まれた4人の子供もみな亡くし、奥様も亡くす。そして、二人目の奥様には逃げられ、三人目の奥様をもらったが、今度は、生まれてくる子供を見ることもかなわず、ひっそりと亡くなった。
 63歳だから、この時代なら決して早死にはしていないが、新しいわが子の誕生をみることなく死んだ一茶ははたして幸せといえたであろうか?
 年がいってから妻帯して、子にも恵まれたとしても、その子の誕生を知らずに亡くなる、また無事に生まれたとしても自分が衰えていてすぐに亡くなってしまっては、これも無念で悲しい。と林蔵は思った。

 だが、勘定奉行の村垣は、林蔵がずっと独り身で子もいないのを惜しんでいた。せっかく武士になったのに、家を失うことになる。役人職をつがせるべく、林蔵の親戚の子を養子にしたらと思い、林蔵を説得したが、林蔵は、断った。
今さら、家を継いでもという気持ちもあったし、養子にこんないくら武士でも隠密の仕事をやらせたくないと思っていた。
 こんな仕事、俺の代でたくさんだ!と林蔵は思う。もちろん、自分は子供の頃に測量家の村上島之允にかわいがられ、弟子として活動しているうちに、ついには誰もがやらなかったことをやり、道を進んで未知の場所を見ることができた。
だが、幕府はそのエゾを松前藩に返してしまい、今や幕臣の自分にも直接関係なくなってしまった。仮に養子をもらっても、その子も自分と同じ隠密、ただのよその藩の調査(粗探し)だ。
たしかに、幕府を守るために不可欠ではあるが、平気で人をだましていなければいけない。こんな仕事はやはり、仮に子ができてもやらせたくない。

 自分の養子にしてまでやらせたくない、それこそ村垣様の直系以外の部屋住みの次男か三男のご子息にやらせればいいじゃないですか、と言いたくなるのを、ぐっと我慢した。

 また、村垣より任務の知らせがきた。今度はエゾで外国船が来たので、奉行に来てくれとのことであった。

 江戸にずっといても、まだまだ巷で噂されて、嫌われていることを人一倍感じている林蔵は、これでエゾに行けるかも、と喜んだ。だが、船はロシア軍艦でなくイギリスの捕鯨船であった。だが、日本側が警戒して、お互いに鉄砲のうちあいになり、日本人をつかまえると、書簡を渡し、釈放していた。

 自分たちは航海しているうちに日本近海に来てしまった。通常、我々は薪や水が必要な時はやむなく各国の地に上陸する。今回もそのつもりでいたが、日本側は、自分たちの10倍にも人を増やして戦さの構えをしたので懲らしめたくなった。
 イギリス人は鬼でも猛獣でもないし、ただ薪や水が不足した時は港に入り入手したいだけだ。それにイギリスは西洋で一番の海軍国である。敵と思わず、オランダのように優遇してほしいといった内容であった。
 
 その現場を確認したいと林蔵は思ったが、今度は6月に、江戸の近くでも異国船が来て騒ぎになった。そうなると、次は江戸で協議となった。日本中すべて海、海のおかげで守られていたはずが次々と大型船が姿を見せる。
 7月にもまたエゾで、異国船騒ぎであった。どうして続くか、やはり水や薪がほしいのであった。日本側が、外国船がきたらどんどん打ち払うというのは、異国をかえって怒らせるということだと、林蔵も考えた。

 「昔のエトロフ島では、絶対に戦うと叫んでたのに、だいぶやさしくなったな」と幕閣で評判になった。
 林蔵は、ロシアの場合と他の国の場合ではやはりちがうと思っていた。ロシアは広い大陸を移動してすでに近くオホーツクやカムチャツカまで勢力を広げている。だから、日本へ薪や水をほしがるのはおかしい。それに、日本人がいないと思ったら領土をとるおそれもあった。
だが、他のイギリスやアメリカのような国は、本国からわざわざ船だけ乗って日本まで来るのである。だから、必要なモノを与えて退去されるべきであると思った。
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プロフィール

作者:福田純也
福田純也
性別:男性
男性

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