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 林蔵、奥の道未知!をいく

 江戸時代の探検家、間宮林蔵を題材とした小説です。

その十一

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その十一

本州を北に進み、陸奥まで着き、蝦夷の松前行きの舟を待っていたら、松前奉行小笠原伊勢守が病気で亡くなっていたということを知った。

 どうも、松前に赴任される人は、すぐ病気になる。内心は、蝦夷地行きは栄転ということで身分が高くなるとしても、みなここに来たくないのかな、江戸を離れて、蝦夷地の冬は特に苦痛だから本州に戻りたいと思っている。

 こんなことではいずれ千島だけでなく蝦夷だって南下を目指すロシアにとられるぞ!と不安な気持ちがつのっていた。

 ただ、幸い代行には、以前から世話になっていた再び高橋重賢が任命されていたから、林蔵は自分の意見が通りやすくなるかもしれん、と考え舟に渡った。

  林蔵は松前奉行につくと、高橋重賢に着任報告をして、早速、状況を尋ねた。

 奉行は、5年前に「エトロフ島へ来襲された際、捕らえられた五郎治の説明とゴロブニンが言っていたことを吟味していたが、やはり、エトロフ島を襲撃したフォストフ大尉は不法行為をしたとしてロシアの政府から罰せられたのち、脱走中に川におちて亡くなったという。
 
 高橋たち奉行者も、ゴロブニンたちに同情的になっていた。彼らは自分たちの航路の安全のため測量していたわけで、決して日本を攻撃しないし、ここは高田屋嘉兵衛を釈放してもらう代わりに、彼らも釈放したらいい、と言った。

 林蔵が反対しようとしたら重賢はやさしくさとすように言った。

「林蔵、お前は直接択捉でひどいめにあっているからロシアを恨んでいるようだが、ここは相手に恩を売ったほうがいい。それがゴロブニンのおかげでロシアの内容がより深くわかってきたし、また高田屋嘉兵衛がカムチャッカから帰国できればあらたな情報がきけるものだしな。決して油断するわけでないから安心するがいい」と言われると、林蔵は返す言葉なく、確かに重賢の言葉も一理あるかも、と思い、うなずいた。

 文化10年(1813年)の正月を迎えた。その時、松前から箱館の港にいた林蔵は、いくつかの手紙をうけとった。一通は、江戸で会った小林一茶からであった。やはり、昨年の11月(現代の正月頃)に江戸をひきはらい、雪の降り出した故郷にもどったとのことであった。
 
 ついに一茶殿、もどられたか。あの人もずっと江戸にいたり、西国をめぐったり、定住していなかったな。俳諧を極めたけど女ひでりの今、それが足りないと言ってたな、故郷で妻をめとったらいよいよかわるのだろうか。50歳で子持ちになってまたくらしはかわるのだろうか、と思った。

 でも一茶殿も50なら、相手の女性も40こえたような人かもしれんな、でも、2人で暮らせる。俺には無理だ、今は無理だな、と我が身をさびしくも思ったが、だが俺には大きな任務がある。とまた思い返した。

 "人多い、江戸はそれでも 日照りかな、男ばかりで 今日も煙草を"

 江戸は男ばかりだから、吉原や品川の女郎屋がはやるそうだ、もっと女のいる店をエゾにつくればエゾも日本人増えるな!と思ったが、うーん、幕府は本気でロシアとの問題を考えているのだろうか、その場しのぎのようだと思えてならない。

 そうだ、俺もロシア語を学ぼうかな、でも習得したら急に西国の九州や四国の方へ測量してくれと幕命がでるかもしれんな、と思って、次の手紙に目を通した。次は、江戸にいっていた村上貞助からで、別に2人、自分よりもロシア語のできる通詞が2人、来月には着任します、とのことであった。手紙によると、ロシアに漂流していた大黒屋光太夫からロシア語を学んでいたとのことであった。

 林蔵は、光太夫の名前が久しぶりにでてきたことをなつかしく、またうれしく思った。最初から、こういう人をつれて来ればよかたんだ!何で今になって!と、怒りも覚えた。

 いかに村上貞助が優秀でも、半年で全く文法も、発音もちがうロシア語ができるとはいい難い。江戸はいつも、ロシア人から厳しく吟味せよと松前奉行にいってながら、本気でやらない。ロシア人に同情するのもひとつのやり方かもしれないが、やはり厳しくいくところはきちんとやらないと。すでに獄中といいながら、江戸の光太夫殿みたく軟禁といっていい状態のゴロブニンから、もっとききださないと。でも、俺は嫌われてるかもしれんな。ゴブロニンも俺の姿をみたら、急に口を閉ざし、わざと態度をかえるかもしれない。ここは新しい通詞たちにまかせて、自分は助言するようにしよう、思う。来年2月だな!よーし、と、また林蔵は気合をこめた。
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プロフィール

作者:福田純也
福田純也
性別:男性
男性

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