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 林蔵、奥の道未知!をいく

 江戸時代の探検家、間宮林蔵を題材とした小説です。

その四

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その四

白主の港についた林蔵は、まず、ついについた!と思い、ゆっくりと幕府(正確には藩が最初につくり、後に幕府の管理下に入った)の会所に入った。林蔵が建物に入ると、そこには数人の男たちがいて、震えながら炉を囲んでいた。みな、林蔵をみて、声をかけないのを不思議に感じていると、突然背中から声がきこえてきた。

 「失礼だが、間宮林蔵殿かね」

 思わず林蔵がふりむくと、そこにいたのは、最初の探検で同行した松田伝十郎であった。

 「ああ、松田様、間宮です。先程トンナイからの舟でもどりました。松田様も樺太に来られていたのですか?」

 松田は林蔵の姿のすっかり変わったのをみて驚いた。これではやはり昔、探検した時のアイヌ人のようである。ひげはぼうぼう、顔は雪焼けしたのか黒くかつ、やせこけていた。食事は、かなりとっていたつもりだったが、やせたというより、異文化世界にもまれてやつれたといった方が正しいかもしれなかった。

 「よく無事でもどられた。うん、よくもどったな、煙草はどうだ。一服やるか」

 「はい、いただきます。トンナイにくる時に残っていた煙草、みな、現地人にあげてずっとすえなかったんです」

 林蔵は苦笑して言った。

 「現地人って、アイヌ人か」

 「いえ、ニヴフ人です」

 と林蔵は答えると、松田からもらった煙草をうまそうに吸い、一息ついた。

 その間、番人たちは急にあわただしく動いて、召使のアイヌ人も風呂をわかしたり、と忙しくしだした。そして、煙草を吸いおわると、お風呂に入らされる。

ボロボロの衣服をぬいで、ザブンと湯につかると、いきなり身体がかゆくてたまらなくなる。それで身体をこすると、でるわでるわと、身体の汚れのたまったアカがでて、皮膚がヒロヒリとした感じまでしたが、次第にすっきりしてきた。ヒゲもそり、月代はいづれそればいいと思ってまず顔をよく洗った。そして髪にもお湯をかける。)またかえって髪というか頭全体も痒くなる。その繰りかえしであった。

 しばらくしてやっとでると、だいぶ、身体がすっきりとしていた。汚れた衣服のかわりに下帯から着物まで新しいのが用意されていて、林蔵は感謝しながら着た。

 風呂からでると、松田が酒を温めていたようで、喜んでついでくれた。

 「無事でよかった。肴は焼鮭だが、一杯やってくれ」と言った。

 酒を飲み、鮭を食べる。鮭は今回の探検で何度もというか、ほとんど主食のような感覚で食べていたが、白主のこの鮭はまた塩味がきいてまた一段とうまかった。うまくて涙がでる。松田はよほど苦労したんだな、と思い、少しづつ質問した。酔いもまわって、林蔵はいつも以上に、じょう舌になる。樺太北部のラッカよりも更に北までいけたのと、また、樺太から東韃靼があまりに近いので、現地のニヴフ人が朝貢する舟に乗せてもらったこともいった。そこは、国境をこえることになるとまずいと思ったのですが、いつまでも彼らの村にいるわけにもいかず、と弁解気味になったが、酔った松田は「ともかく、大陸まで行ってロシアや清国のことがわかってよかったじゃないか、アムール河まで調べ上げたとは、よくやったな!!」と驚き、ほめてくれた。俺はやはり正しかった、行ってよかった!と思えてきた。その日は久しぶりに、日本式の畳の上でやわらかい布団にくるまり、冬眠する熊のように眠りこくった。
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プロフィール

作者:福田純也
福田純也
性別:男性
男性

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