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 林蔵、奥の道未知!をいく

 江戸時代の探検家、間宮林蔵を題材とした小説です。

その五

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その五

林蔵は着物の懐中から、古くなった一枚の紙をとりだした。
「こちらです。清国人も当然、漢字を書きます、当たり前のことですが、、」と、林蔵は照れ笑いを浮かべながら、言った。

「うむ、これは、当たり前ですが、漢字の詩ですね!」と、一茶は目を見張った。

{蘭陵美酒鬱金香、玉椀盛来琥珀光、但使主人能酔客、不知何處是他郷}

「日本語ですと、どんな意味でしょうか。何となくわかりますけど、、、」

「はい、私も何となく意味はわかりましたけど、樺太の南端まで戻り、そこで、松田様に再会できまして、この紙を見せたところ、こんな意味だろうと、二人で話し合いまして、わかってきました」と林蔵は言うと、少し改まって声を出し、読んだ。

 「まず、蘭陵の美酒、鬱金(うこん)の香り、鬱金は、清国に咲くいい香りの花だそうです。要は、美味しいお酒を玉の碗に注がれて光りを放し、主人が私のことをたっぷり酔わせてくれたら、それでいい!、そこが、住んでいる所でなく離れた異郷でもいいのだ!といった意味ではないかと話しました。唐代の頃の詩人、李白は酒と旅が好きな詩人だったとかで、清国の役人も夏の間、わざわざ河をずっと下ってやってきたから、李白に思いを寄せたのかもしれませんね。
 私自身、樺太、そして、大陸、東韃靼とも言うのですが、そこまで行き、なんかずっと現地人と一緒のど田舎か、無人の樺太から奥の清国人の役所まで行けたから、その時、満足したのでしょう、あの時だけ疲れが減った気がしました。この詩は、気に入りました。江戸にもどりましたし、いずれ、旅と酒を楽しく、それに、あとは、樺太で全くできなかった温泉の湯治を兼ねて、したいものです」

 「蝦夷の松前まではずっと帰りですから、気を張られていたでしょうね。蝦夷から江戸までの道中はいかがでしたか。楽しめなかったですか?」と一茶が尋ねた。

 「はい、蝦夷の箱館まで着き、そこで奉行に出向いて探検の報告をしまして、それから、体調があまり良くなく、休みながら、今回の調査の記録をまとめておりました。箱館で、協力してくれる方も幸いおられましたので。それから、江戸にでたのは、一度体調がよくなってからですが、それでもまた、道中、疲れて弱ってしまいました。それから、蝦夷を出て、奥州についてから歩きです。それまでは、船にずっと乗ってましたが奥州を南に行くのに、歩いていましたから。
 もともと、足には人一倍、自身があるのですが、しばらく歩いていないとだめですね。それに、蝦夷では、お奉行にもお褒めの言葉をいただきましたけど、樺太から大陸に渡ったことで、もしかしたら、江戸で咎めを受けるかも、と内心、心配もしておりましたので、余裕がなかったです。いずれ、幕命でない気楽な旅がしたいです。それこそ、今度は西に向かって、箱根も大井川も越えて、お伊勢参りなど」と、林蔵はふぅ!と息を吐くと答えた。

 「西ですか。私も西国に行きましたけど、若い頃は全く余裕がなかったですね。各地で俳諧を修業しました。もっとも四国の伊予の松山城下では、すごく俳諧が盛んで、ここにある道後温泉という古くからの温泉にずっと入って、楽しく過ごせましたけど、、、、。今、思うともっと楽しみたかったです。あと、李白の詩のとおり、酒、旅と、確かにすばらしいですけど、一つ足りものがあると思います」

「足りない?、何が足りないでしょうか?」林蔵は尋ねた。
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プロフィール

作者:福田純也
福田純也
性別:男性
男性

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